十代の戦争/つなぎのこされた、はがきと写真(群馬県太田市)

書籍_私家版

タイトル『若者たちの夢の跡』(藤生静枝)

ご紹介します 

群馬県で最も読まれている新聞は、県域地方新聞の上毛新聞。発行している上毛新聞社出版部の石倉実奈さんが、自身が編集を手掛けた自分史として本書を紹介します。

書き始めのきっかけ

筆者は、「お父さんのことをもっと知りたい」という長女の言葉で、米寿となって早く書かなければすぐに書けなくなると思い立ち出版することを決められました。ご主人は、長女が大学生のときにお亡くなりになっています。

第2部の執筆のきっかけは、筆者が同窓会で後輩から「一番激しい戦争の時代を女学生として過ごした学年は、先輩たちだけです。後にも先にも二度と経験することにないことです。ぜひ、書いておいてください。」と言われたことでした。

最初に、出版についての相談を受けた後、ご自身で数年かけて関係する人の話を聞き、素材を集め、原稿を書かれました。いよいよ本づくりの具体的な話を始めるときには、タイトルは何で、どのような構成にするか、かなり具体的に材料が整理されていました。

編集者・石倉実奈さん

第一部「予科練」

予科練時代に関して、著者がご主人から生前聞いたことは限られています。残された資料も二通の手紙だけでした。それらを手掛かりにして、茨城の予科練平和祈念館の訪問と隊友の集いへの参加によって、ご主人が予科練で過ごした時代に分け入っていきました。

第二部「女学生」

預かった先生が戦火から守った集合写真

還暦のお祝いも兼ねた同級会の修学旅行。戦後70年たっての同窓会。鹿児島・知覧の特攻平和祈念館で見つけた特攻機をつくる同窓生の写真。ご自身の戦時を振り返る機会が原稿の執筆を後押ししました。

1年をかけて本になるまで

表紙と裏表紙のイラスト

ご夫婦が出会って結婚する前、十代の二人の戦時中の体験を子どもや孫に伝えようと書き始めた自分史。執筆の過程で、家族や友人、そしてその時代を生きたたくさんの人々へと視野が広がっていきました。
終戦から75年、現代の十代の皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思います。

紹介をうけ、拝読しました。

ご主人が志願して入隊された土浦海軍航空隊。偶然ですが、数日前に読み終えた別の方の自分史にも登場していました。昭和19年9月から20年2月までいらっしゃったので、隊内ですれ違っていたかもしれません。

その本は、自分史の元祖と呼ばれる歴史学者の色川大吉さんの「ある昭和史-自分史の試み」です。戦後30年の節目、昭和50年に書かれたものです。大学在学中に学徒出陣で土浦海軍航空隊に入隊されました。

同じ時代を生きれば、共有・共感することもあるでしょう。ただ一方で、一人ひとりの自身の視野から見える風景や直接の体験は違っていてあたりまえです。土浦でのそれぞれの日常の記述を対比して、あらためてその当たり前のことを考えさせられました。「歴史」としてまとめられる時代の背後には、たくさんの人々の息吹があります。「自分史」を残すことの意味はそこにあるのかもしれません。

著者も執筆の過程で、ご主人の日常をご自身の体験とを関係づけたり、それぞれのご友人の話を聞く中で、時代に対する理解を深め、後生に平和の大切さを伝える一冊を送り出してくれました。読者である私もバトンを引き継がなければなりません。

文責:自分史カフェ 本間浩一(2020/8/3)

この本は・・・

著者 藤生静枝
発行 2019年7月6日
発行所 上毛新聞社事業局出版部(2020年4月に、デジタルビジネス局出版部に変更)

著者が執筆の参考にした訪問先

予科練平和祈念館(茨城県阿見町)

知覧特攻平和祈念館(鹿児島県南九州市)

読みたいときは

国立国会図書館収蔵

太田市立図書館収蔵

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