父の姿 愛情と本質(星新一の2冊)

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『明治・父・アメリカ』『人民は弱し 官吏は強し』

紹介します  

自分史活用マスター・藤森雅世さん

私が星新一という作家を知ったのは、父からのプレゼントがきっかけです。私の父の本棚にはハヤカワ文庫SFや創元SF文庫がたんまりありましたから、自分が好きなSFを子どもに伝えるのに、星さんの短編はうってつけだと思ったのでしょう。

星新一といえばショートショート。私の中ではそう分類されていたのですが、ある日書店で見つけた、この2冊は違っていました。そもそも長編みたいだし、表紙も、おしゃれなイラストではなく、時代がかかった装丁です。

SFの星さんが、なんでこんな題名?と思い、手に取って見ると、実父の人生をたどった作品とあります。息子・新一さんに、2冊にわたる長編を書かせたお父さんって、どんな人? 俄然、興味がわき、購入したのでした。

星さんの父・一(ハジメ)さんの、苦学の末にアメリカ留学を果たし、製薬会社を興すところを描いた『明治・父・アメリカ』。そして、星製薬を軌道に乗せたものの、第二次世界大戦のあおりを真っ当に受け、不本意極まりない目にあっていく『人民は弱し 官吏は強し』。
これを読んだ高校生の時には、ただただ、あまりの理不尽さに私も一緒になって怒り、こんな時代をまた作ってはならないと思ったものです。

これだけの人生を送った父親ではありますが、新一さん自身は「いつも忙しくしていて、自分の前ではニコニコしていたというのが父の記憶」と後日語っていらっしゃいます。執筆のための調査や取材から初めて知った父親の姿には、複雑な思いがあっただろうと推察されます。時代の証言としても、父の自分史としても、秀逸な作品です。

(2020/5/30のzoom読書会でご紹介いただいた後に本原稿をご寄稿いただきました。)

読み終わって  

自分史活用アドバイザー・戸来淑子さん

zoom読書会で)藤森さんから星新一の本のご紹介がありました。私は星新一の本を読んだことがなければ、星製薬のことも知りませんでした。が、題名をお聞きし、Zoom会議が終わる頃には、モヤモヤチカチカという感じになってしまいました。心の中を探っていくと、29年前に仕事の出先で倒れて亡くなった父の葬儀での弔辞への怒りでした。

会社人間で(生命保険会社でした)、真っ直ぐで敵が多かった父。ストレス解消のはずのお酒。楽しいお酒ではなく、酒に飲まれてしまうひどい悪酔いで、母はさんざん苦労しましたが、職場結婚をした母には、父の苦悩が手に取るようにわかっていたのだと思います。数少ない理解者の中には、社長さんもいました。それがまた敵を作る原因ともなっていました。弔辞を読んでくださった方は、型通りに父の功績を讃え、最後に飲酒を咎める内容で締めました。真っ正直に会社に身を捧げたという父の本質を捉えていないことに大きな怒りを覚えました。そんな29年前のことを急に思い出すなんて・・。
「自分史の書き方(立花隆著、zoom読書会の題材)」に「記憶の記銘の強さには、その記憶に伴っていた感情の強さが反映する」とありました。まさにそうですね。

さっそく本を2冊、購入しました。まず、「明治・父・アメリカ」星一さんのお父様お母様の人間の大きさが素晴らしい。一さんの、転んでも起き、転んでも起き・・の人生。自分の世界を確実に拡げていくバイタリティーに圧倒されました。

そして、「人民は弱し官吏は強し」これは、一さんが40才の時からのこと。星一いじめともとれる数々の困難。これでもかこれでもか・・と起こる困難に、星一さんが意に反してどんどん追い込まれてしまい、読むことが辛くなってしまいました。私の拙い経験の中でも、出る杭は打たれる、妬みはしつこく、意地汚い、発する言葉を信じられなくなる絶望的な孤独・・はわかります。星一さんはどんなに辛かったことでしょう。

星一さんのメンタルの強さはどこからきたのでしょうか。親友の安楽さんの存在はとても大きかったと思います。家族はどうだったのでしょうか。星新一は、星一さんの52才時の子どもになります。星一さんの文中最後の言葉「人民は弱し、官吏は強し」を発した時は、新一は生後1ヶ月と思われます。不当な官僚組織と闘い続けた一さんにとって、家族は大きな支えになっていたのではないでしょうか。

この2冊の本を通し、新一の父親への深い愛を感じました。

自分でも思いがけず亡き父を振りかえる機会になりました。そして、現代史をもっと学びたいと思いました。本を紹介してくださった藤森さん、ありがとうございました。

この本は・・・

著者 星新一 
発行所 新潮社

主人公 星 一(ほし はじめ)
1873年(明治6年)12月25日 – 1951年(昭和26年)1月19日)福島県いわき市出身

明治・父・アメリカ

1978(昭和53)年8月25日 発行/新潮文庫

人民は弱し 官吏は強し

1978(昭和53)年7月25日 発行/新潮文庫

読みたいときは

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